Ye

2024年2月10日リリース

VULTURES 1

VULTURES 1

概要

VULTURES 1は、Ye(Kanye West)とTy Dolla $ignによる共同名義¥$のデビューアルバム。2024年2月10日、YZYからインディペンデントでリリースされた。先行曲のVULTURESTALKINGCARNIVALを軸に話題が広がり、アルバム自体はBillboard 200で初登場1位を獲得。さらに Billboardでは全16トラックのHot 100入りが報じられ、「CARNIVAL」はこの時期の最大のヒットになった。

音の軸は、Ty Dolla $ignのメロディアスなフックと、Ye主導のビートメイクの組み合わせ。ゲストにはNorth West、Freddie Gibbs、YG、Quavo、Playboi Carti、Travis Scott、Rich The Kid、Lil Durk、Chris Brownらが参加し、プロダクション面でもJPEGMafia、Timbaland、Swizz Beatz、88-Keysらが関与している。

制作〜ロールアウトは終始かなり不安定だった。VULTURES公開後も延期や仕様変更が続き、配信開始後には Apple Music上の表示や音源がブレる場面もあった。作品の内容だけでなく、リリースの混乱自体がニュース化した点もこのアルバムの特徴で、この“未完成気味でもまず出す”進め方はVULTURES 2でさらに極端になる。

この作品の文脈で重要なのは、Yeが2022年以降の大規模な炎上と業界的孤立を経たあとでも、なお商業的な注目と大衆的な拡散力を失っていなかったことを証明した点にある。メジャーレーベルの強い後ろ盾がない状態で、ここまで大きく会話を支配し、チャート上でも結果を出したこと自体が異例だった。実際、Billboardでも「CARNIVAL」の全米1位がYeのキャリアにとって何を意味するかが論点化されている。つまり VULTURES 1は、かつての名作のような完成度で評価される作品というより、「Yeという存在がまだ市場と文化を動かせる」ことを露骨に可視化したアルバムだと言える。

批評は概ね賛否混合だが、方向としては「勢いはあるが、作品全体としての芯は弱い」という見方が多い。Pitchforkは5.8/10で、サウンドの即効性を認めつつ、挑発や下品さが惰性的に反復され、かつてのYe作品ほどの切れ味には届いていないと評価した。一方で商業的には強く、アルバム全体の評価と個別曲のヒット力がズレていた点も、VULTURES 1を理解するうえで重要である。

楽曲